研究内容
1.薬物治療の最適化を目指した橋渡し研究
薬物治療の用法用量は臨床試験の結果に基づいて決定されます。臨床試験には遵守すべきルールがありますが、こうして決定された用法用量が、最適な薬物治療の提供に必ずしも結びつきません。例えば、1日3回投与される一部の抗菌薬について、より優れた治療効果を得る用法用量が別に設定できることが、最近になってようやく明らかにされました。これは医薬品の市販後の基礎研究によるものです。また、抗がん剤については、経験豊富な医療機関で決定された用法用量と手順(プロトコールといいます)に従って投与されますが、より優れた治療成績を得るプロトコールが存在するか否かは不明です。我々は、抗菌薬や抗がん剤などを対象に、医療機関との共同研究体制を構築して、臨床研究結果に基づいて基礎研究を、また基礎研究結果に基づいて臨床研究を行い、薬物治療の最適化を目指しています。
2.抗がん剤、経口血糖降下薬などのPK-PDに関する研究
分子量などの薬物側の要因と臓器血流速度などの生体側の要因が複雑に関連して、薬物の血液中の濃度推移(薬物血中濃度推移)が決定し、薬物血中濃度推移に応じて薬物の治療効果、副作用が決定します。一連の関係をPK-PDといいます。我々は、抗がん剤、経口血糖降下薬などを対象に、血中濃度と治療効果、副作用との関係を明らかにしています。
3.薬物の血管外組織への移行特性に関する研究
薬物の作用部位以外の臓器への移行性が薬物の副作用に少なからず関わっています。臓器移行性の評価法としては、臓器を摘出して、全体の濃度を測定する方法が一般的ですが、この方法では細かな動態がわかりません。我々は、血管内から血管外組織への移行性を評価できる方法を見出しており、薬物の血管外組織への移行特性に関して基礎的な知見の収集を行います。