分野希望の3年次生へ
- 分野:
- 薬物動態学分野 Laboratory of Pharmacokinetics
- 科目:
- 薬学研究
- 教員:
- 伊藤 由佳子 教授、河渕 真治 助教
薬学研究の概要
病院で患者さんに使われる「くすり」は、単なる化学物質ではなく、錠剤・カプセル剤・注射剤などの医薬品製剤です。薬は体内で、投与 → 吸収 → 血液 → 臓器 → 代謝・排泄という過程をたどります。この体内での動きを科学的に解析し、より効果的で安全な使い方を考える学問が薬物動態学です。
たとえば、
① なぜ薬は1日3回飲むのか?
② なぜ錠剤と注射で効き方が違うのか?
③ なぜ副作用が出やすい人と出にくい人がいるのか?
こうした疑問は、薬そのものの性質や、年齢・体重・腎機能・肝機能など患者さん側の違いによって生じます。私たちはこれらを明らかにし、一人ひとりに最適な薬物治療(個別化医療)の実現を目指しています。
我々の分野では、現在、以下のテーマで研究を行っています。
1)抗がん剤のPK/PD解析
大腸がん治療では生存期間が延長する一方、末梢神経障害や骨髄抑制などの副作用、腎機能低下時の投与量調節が課題となっています。当分野では、大腸がんモデルラットを用いて、抗がん剤の体内動態(PK)、治療効果(PD)、副作用(TD)を定量的に解析し、効果を高め副作用を抑える最適な投与設計を目指しています。
2)リキッドバイオプシーによる膵がん化学療法の最適化
血中循環腫瘍細胞(CTC)は、がんの転移や病態を反映する重要な指標ですが、治療への活用法は十分に確立されていません。当分野では、膵がんモデルマウスを用いて、治療効果・抗がん剤の体内動態(PK)・CTC変動の関係を解析し、予後改善につながる最適な治療指針の確立を目指しています。
3)経口血糖降下薬を対象とした PK-PD 解析に関する研究
SGLT2阻害薬などの経口血糖降下薬は広く使用されていますが、治療効果には大きな個人差があります。当分野では、臨床データを用いて患者背景が体内動態に与える影響を解析し、母集団薬物動態解析とモデリング・シミュレーションにより、より適切な用量調節法の確立を目指しています。
4)血液バイオマーカーを活用したアルツハイマー病治療薬の治療管理
近年、血液バイオマーカーによるアルツハイマー病の診断技術が注目されています。しかし、治療における薬剤選択や投与管理への応用は、まだ十分に進んでいません。当分野では、個別化医療の実現を目指し、血液バイオマーカーに基づく薬剤選択と治療管理法の確立に向けて、アルツハイマー病モデルマウスを用いた研究を進めています。
5)ミトコンドリア賦活サプリメントのPK-PD解析に関する研究
ミトコンドリア機能を賦活するとされるサプリメントは、アンチエイジング効果への期待から使用が広がっています。しかし、経口摂取後の体内動態や作用発現との関連は、十分に解明されていません。当分野では、摂取後の体内動態をラットで検証し、最大限の効果を得るための効果的な摂取方法の提案を目指しています。
薬学研究の具体的な内容
薬物をマウスまたはラットに投与し、血液や臓器を採取して、薬物濃度をLC-MS/MSなどの分析機器で測定します。あわせて薬効や副作用を評価し、得られたデータをもとに、数理モデルを用いた定量的な解析・予測を行います。
配属当初は、教員や先輩の指導のもとで基礎的な実験手技や解析方法を習得し、その後は主体的に研究を進めていきます。研究は自由度が高く、主体性が求められますが、自らデータを取得し、考察し、成果としてまとめる経験は大きな成長につながります。
研究は原則として1人1テーマで進めます。候補テーマの中から興味のある課題を選び、5年次終了までの学会発表を目標としています。さらに、卒業までに卒業論文発表および学会での研究成果発表に取り組みます。また、月1回程度のデータ報告会で進捗確認を行うとともに、週1回程度のセミナーでは英語論文の紹介を通じて、論文読解力・プレゼンテーション力・研究マインドの向上を目指しています。
求める学生像
1)将来、製薬会社で研究・開発・学術・医薬情報(MR)などの仕事に携わりたい方
2)臨床薬剤師として医療の第一線で活躍したい方
3)薬物動態研究に興味があり、研究活動に積極的に取り組みたい方
何事にも意欲的に取り組み、明るく前向きにチャレンジできる方を歓迎します。
