本分野は、2017年4月に国公私立薬学部として初めて設置されました。現在、様々な診療情報が電子化され、目的に応じて抽出、解析し易い環境になりつつあります。一方、電子化された診療情報をどのように利用し、活用すべきか未開拓な部分でもあります。
一方、現在、薬剤師は「チーム医療」や「かかりつけ薬剤師」など、社会から求められる役割は多様化し、増加しています。そして、こうした社会からの要求に対して薬剤師は関わったことに伴う成果を世の中に示す必要があります。
本分野では、ヒト集団に使用した医薬品の使用状況や、医薬品の効果や副作用、薬物療法に介入する薬剤師の成果を様々な「医療リアルワールドデータ」を用いて追求します。また、臨床情報から得られた結果を基礎の研究室とも共有するなどして、基礎と臨床を繋ぐことも目指します。
社会に出る前の学生が、リアルワールドデータを用いた研究に触れ社会に出た後に活躍出来る人材の育成、また社会に出た薬剤師がリアルワールドデータを活かし、社会に貢献できるよう支援していきたいと思っています。
テーマ1:レセプト情報・ナショナルデータベースなど、様々な情報を利用した感染症治療における評価指標の探索
現在、世界的に耐性菌が蔓延し、対策をとらなければ2050年の死亡者数はがん患者を超えることが予想されています。抗菌薬の耐性と不適切な抗菌薬の使用は関係があるとされ、各国で抗菌薬使用状況の把握が必要とされています。しかしながら、日本では継続的に抗菌薬の使用動向を把握する仕組みは構築されていませんでした。
これまでに私達は販売量データや各医療機関のデータを用いて日本における抗菌薬の使用動向を明らかにし、こうした結果は国策に活かされています。本研究テーマでは、レセプト情報やナショナルデータベースなど、様々な情報源を用いて日本における感染症治療における評価指標を探索することを目的としてします。
テーマ2:薬物療法に介入する薬剤師の影響を評価する指標の探索
現在、薬剤師は診療報酬改訂に伴う新たな業務やチーム医療に対して求められる活動に対して、積極的に介入し、その貢献を患者(社会)に示さなければなりません。もちろん、特定の患者に対して介入し、生命予後に貢献することも評価指標の1つとして重要ですが、経済的な効果や医師の労務負担軽減など、評価するために用いる指標も様々です。
そこで、本研究では現場の薬剤師が実際に行おうとする介入に対して最適な評価指標を様々な角度から検討、探索し、効率良く診療情報から抽出解析する手法を確立することを目指します。
テーマ3:電子カルテ情報を用いた医薬品の効果や副作用における評価法の探索
日本では現在、様々な情報が電子化されており、診療情報のなかでカルテ記録でさえも容易に抽出できる環境にあります。一方、次々と新薬が承認されている状況のなか、投与された患者に発生する未知なる副作用や有効性に関する情報は効率良く収集評価し、対応する体制が必要とされています。これまで、ある医薬品を投与した患者に対する副作用や効果に関する指標はカルテから1つずつ抽出するなど作業が非常に煩雑でした。
本研究では、薬剤師が直面した「医薬品を投与した患者に起こった効果や副作用に対して電子カルテ情報等から効率良く情報を抽出し、要因分析を行い評価する手法」の確立を目指します。一連の方法論を構築することにより、薬剤師が直面したクリニカルクエスチョンを解決することを容易にしたいと考えています。
テーマ4:レセプト情報・ナショナルデータベース等の医療ビッグデータを利用した二次発がんリスクの明確化
臨床研究へのご協力のお願い
当分野では、医療情報などを用いた臨床研究にも取り組んでいます。臨床研究のうち、患者さんの診療に直接影響しない研究(過去の診療録データを集計し分析する研究、アンケートを行った結果を集計する研究)についても本学の倫理委員会の審査・承認を受けて実施しており、患者さんのプライバシー保護には細心の注意を払っています。
ご理解、ご協力のほどよろしくお願い申し上げます。
なお、研究への協力を希望されない場合は、当分野までお知らせください。
該当する臨床研究一覧
・順次アップデートされます。