京都薬科大学 薬品物理化学分野

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薬品物理化学分野

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研究内容

私たちは、脂質異常症、アミロイドーシス、神経変性疾患、がんなどの様々な疾患をターゲットとして、これら疾患発症に関わるタンパク質や脂質の構造や機能を物理化学的・生化学的・細胞生物学的手法を用いて解析することで、疾患発症の分子機構の解明や新たな疾患バイオマーカーへの応用研究を行っています。また、脂質-タンパク質相互作用の解析による機能性生体分子システムの設計や細胞膜透過性ペプチドの作用メカニズムの解明など、生体現象の生物物理化学的理解に基づいた創薬展開を目指しています。

1.アポリポタンパク質構造機能異常による疾患発症の分子機構解明

アポA-Iは“善玉コレステロール”として知られるHDLを産生するタンパク質ですが、ヒトアポA-Iには低HDL血症やアミロイドーシスなど疾患の原因となる遺伝子変異が数多く知られています。研究室では現在、アミロイドーシス変異であるIowa (G26R)などをターゲットに、アポA-Iタンパク質の体内環境でのアミロイド線維形成・組織沈着・臓器障害作用の分子機構解明を行っています。また、アルツハイマー病発症危険因子であるアポEアイソフォームなどのアミロイド共存分子によるタンパク質凝集・線維化制御機構について、他大学医学部とも協力して研究を進めています。

2.膜脂質の構造と分布の制御を介した細胞機能の調節機構の解明

細胞膜は構造の異なる数千種類の膜脂質が二層に配列した脂質二分子膜構造からなります。また、これらの膜脂質は脂質二分子膜の二層間および各層において不均一に分布しています。細胞膜における膜脂質の構造と分布の適切な制御は幅広い細胞機能にとって重要であり、その異常は脂質異常症やがん、神経変性疾患などと関連しています。私達は、「どのようにして細胞は多様な膜脂質からなる細胞膜を構築するのか?」そして「なぜ膜脂質の構造や分布の異常により疾患が引き起こされるのか?」という疑問を解明すべく研究を行っています。これまでに、膜脂質の構造や分布の制御を介して細胞の物理化学的性質(かたさ,温度,細胞内イオン濃度etc.)が調節されることを見出し、膜脂質がエネルギー代謝や細胞運動の制御に関わることを明らかにしています。このように、膜脂質をキーワードにした研究により、生命機能の根幹をなす原理の理解や疾患の発症機序解明を目指しています。

3.構造特異抗体による新規疾患バイオマーカーの開発

アポA-Iタンパク質は、HDL粒子の産生・成熟やアミロイド線維化の過程でその高次構造(コンフォメーション)が大きく変化することが知られています。そこで、アポA-Iのコンフォメーション変image2_003化を特異的に検出する構造特異的なモノクローナル抗体を新たに開発し、アポA-Iの体液中濃度の測定系や組織での局在様式の画像化法に適用することで、動脈硬化性疾患やアミロイドーシスの病態解明や新規バイオマーカーとしての応用・開発を目指しています。

4.パーキンソン病の病態解明に向けたαシヌクレインの凝集・線維化機構の解明

αシヌクレインは、2番目に患者数が多い神経変性疾患であるパーキンソン病の原因タンパク質です。柔軟に構造が変化する単量体タンパク質が凝集してβシート構造に富むアミロイド線維を形成する過程で、毒性を獲得して神経細胞死を引き起こします。私たちは、パーキンソン病の発症初期に起こるαシヌクレインの凝集・線維化の分子機構解明をについて研究を進めています。

5. 細胞膜透過ペプチドの物理化学的特性評価法と機能特性に関する研究

アルギニン配列に富む膜透過ペプチドは、機能性核酸やタンパク質などの次世代医薬品の細胞内デリバリーキャリアとして期待されています。この膜透過ペプチドの細胞膜透過性を制御する物理化学的特性の同定とその特性評価技術に関し、国立医薬品食品衛生研究所との共同研究を行うことで、細胞膜透過メカニズムの解明と新たな膜透過ペプチドの開発を進めています。

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