うつ病などの精神神経疾患は「五大疾病」の一つであり、画期的治療法の開発が望まれています。うつ病の発症要因として脳-腸機能的連関の破綻が注目されていますが、その詳細は未解明な部分が多いのが現状です。そこで当分野では、うつ様所見誘発マウスを用い、脳及び消化管における炎症誘発機構に加え、腸内細菌叢や生理活性脂質の機能的変動などに着目した研究を遂行しています。さらに、疾患や薬物療法に起因した味覚障害に関する研究、難病・希少疾患や老化に対するペプチド創薬研究も視野に入れて活動しています。これら研究を通じ、疾患のみならず薬物治療に起因する有害事象の発症に対する新たな予防・治療法の提案に繋げたいと考えています。
現在、展開中の研究課題は以下のとおりです。
(1) 抗がん剤及び腸内細菌叢のうつ病誘発性ストレス感受性への影響
ストレスに対する感受性(うつ病の発症)を左右する要因を探っています。
(2) 抗がん剤投与及びうつ病発症における味覚障害発症機構の解明
味覚障害が起こるメカニズムを解明し、副作用の予防や新たな治療法の提案につなげたいと考えています。
(3) 神経ペプチドニューロメジンU受容体が関わる疾患への多面的アプローチ
ニューロメジンUが作用する2種類の受容体の機能と各種疾患との関係を探っています。
(4)マイオスタチン阻害ペプチドを用いた筋萎縮の克服・予防への挑戦
加齢などによって起こる筋萎縮に対するアプローチの最適化に向けた検討を行っています。
(5) 神経・精神疾患における生理活性脂質の役割に関する研究
うつ病などの疾患に生理活性脂質がどのように関与するかを明らかにしたいと考えています。