研究室紹介
研究テーマ概要
薬品が次々と開発され、こうした医薬品を有効かつ安全に投与できる投与形態の開発が重要になってきています。我々の研究室では、こうした背景のもとに、今後益々重要になることが予想される生活習慣病(糖尿病、骨粗鬆症など)の治療薬や癌の治療薬(抗癌剤)の投与の最適化、すなわちドラッグデリバリーシステム (DDS) の開発を進めています。
指導教員・運営スタッフ
- 異島 優 教授
- 小林 勇揮 助教
- 髙成 広起 研究員
- 奥田 裕子 臨時職員
研究室の指導方針・目指す姿
研究室では薬物を動物に投与し、薬物の体内動態や薬理効果を検討するため、動物実験を行います。従って、総合薬学研究での配属希望の方は動物(主にラット、マウス)を扱えることが望まれます。(但し、細胞を用いる実験系もありますので、動物実験ができない方でも実験に参加できます。)学部生は、配属後、教員、大学院生の指導の下、それぞれのテーマについてグループごとに分かれ研究に取り組みます。実験は、時として長時間かかることもあるので、体力、熱意のある学生諸君を歓迎します。
一方、総合薬学演習での配属を希望する方は、上記に掲げたテーマについて文献などを調査、発表する演習を行います。また、研究室では人とのつながりを持つことをモットーにしていますので、実験以外のリクリエーションも盛んです。このように実験やリクリエーションを通して、社会に出てから仕事の上で即戦力となり、すぐれた人格を持つ人物の育成をめざします。生物薬剤学ならびにDDS研究に興味を持ち、何事にも熱意や誠意をもって立ち向かう学生諸君の参加を期待します。薬剤学分野に興味のある方は、どうぞ御遠慮なく研究室(躬行館4F)に来て下さい。いつでも歓迎致します。
研究室の歴史
京都薬科大学薬剤学教室は、1980年に製剤学教室という名称で村西昌三先生を初代教授として開講された教室であり、現在で教室開講27年目を迎えている。教室開講当初からしばらくは、村西昌三教授、高田寛治助教授(現京都薬科大学薬物動態学教室教授)、吉川広之助手(現広島国際大学薬学部教授)、村上正裕助手(現大阪大谷大学教授)の4名のスタッフで、主に生物薬剤学の分野である吸収促進剤による難吸収性薬物の消化管吸収改善、抗癌剤のリンパ移行性の改善、製剤添加物による癌細胞の殺細胞効果増強などについて研究を進めてきた。
その後、高田寛治先生が学内の他の研究室 (当時の薬剤学教室で、現在は薬物動態学教室) の教授に就任され、その後任として私が、1991年1月に当教室に助教授として着任した。着任当初のスタッフは、教授が村西昌三先生、助手は村上正裕先生と藤田卓也先生(1992年3月から着任)であった。私が着任してからしばらくの間 (助教授時代)、それ以前の研究テーマをほぼ引き継ぎ、難吸収性薬物の消化管・経粘膜吸収性の改善、特にペプチド・タンパク性医薬品の消化管・経粘膜吸収改善に関するテーマを中心に研究を進めてきた。すなわち、インスリン、カルシトニン、エンケファリン、thyrotropin releasing hormone (TRH) などのペプチド・タンパクの経粘膜吸収改善を達成するために、
1) 各種吸収促進剤やタンパク分解酵素阻害剤などの添加物を利用する方法、
2) 各種鎖長の脂肪酸によりペプチド・タンパクの分子構造に化学修飾を行う方法、
3) キトサンカプセルなどを用いて薬物の剤形修飾を行う方法、
4) 経口投与以外の新規投与経路 (主に経肺投与) を用いる方法
などについて研究を進めた。特に、これらテーマの中でも、2)に示した各種脂肪酸によりペプチド・タンパクの化学修飾を行う方法は、研究室で独自に開発した方法であり、当大学薬品化学教室の木曽良明先生との共同研究を行い、多くの大学院生がこの研究に参画した。
その後、教室スタッフの異動があり、初代教授の村西昌三先生は、1997年 (平成9年) 11月に定年退職され、その後、1998年 (平成10年) 1月から私が第2代目の教授を拝命した。また、1998年 (平成10年) 4月から研究室の名称もそれまでの「製剤学教室」から 「薬剤学教室」 に変更となった。また、藤田卓也先生は、1992年 (平成4年) に当教室の助手として着任し、当初は研究室の中心課題である難吸収性薬物、特に生理活性ペプチドの経粘膜吸収改善に関する研究を行ってきたが、1996年 (平成8年) に米国ジョージア医科大学の F. Leibach および V. Ganapathy 教授の下に留学し、薬物トランスポーターに関する分子生物学的な手法を習得した。藤田先生は、帰国後、主に 「培養細胞を用いたトランスポーターの輸送機能の制御」について研究を進め、当教室の研究に分子生物学の手法を新たに導入した分野を切り開いてきたが、2007年 (平成19年) 4月から立命館大学理工学部に教授として栄転した。一方、1998年 (平成10年) からは村上正裕助手の後任として岡田直貴助手が新たにスタッフとして加わり、当教室の新規研究テーマとして 「樹状細胞を用いた癌免疫療法の開発」 について研究を行い優れた成果を挙げてきたが、2005年(平成17年) 11月に大阪大学大学院薬学研究科に講師として転出した。その後、2006年 (平成18年) 4月から京都大学大学院博士後期課程に在学中であった勝見英正先生が当教室に助教(着任当時は助手)として着任している。
これらの研究に従事する大学院生については、開講当初の15年間は、ほとんど博士後期課程に進学する者がいない状況であったが、1998年 (平成10年) には内山知実君が、また翌年の1999年 (平成10年) には東崎英之君、権 英淑さんが博士後期課程を修了し、博士の学位を授与されたことに続き、現在までに既に当研究室から課程博士及び論文博士合わせて10名の学位授与者を輩出している。また、現在、研究室には3名のドクターコースの学生が在籍しており、研究室の研究を支えている。また、近年の国際化の流れに従って、当教室では海外からの留学生も積極的に受け入れており、この10数年間に、先程学位を取得した 権 英淑 (中国)、 Joseph J..Tukker(オランダ)、 Eva Lundborg (スウェーデン)、李 国鋒(中国)、Gihan Fetih(エジプト)、Sara Lindberg(スウェーデン)、武 強(中国)、沈 崎(中国)、何 林(中国)などが研究員または研修生として研究に参加している。
また、研究室に在籍した学生数は、教室開講以来2007年(平成19年)3月までで修士課程修了者が116名、学部卒業者は479名となっており、修了または卒業後はそれぞれ製薬会社、病院薬剤部及び薬局など多方面の分野で活躍している。