当分野では,疾患の分子メカニズムを解明し,治療へと繋げるために研究を行っています.疾患としては,今話題となっている‘メタボリックシンドローム’と,最も多い染色体異常症である‘ダウンシンドローム’をターゲットにしており,幅広い手法(生化学的,分子生物学的,組織学的,行動学的手法等)を駆使して取り組んでいます.
高脂肪食を摂取する機会は劇的に増加していますが,高脂肪食による内臓脂肪の肥大化が肥満であり,肥大化した脂肪細胞からはアディポサイトカインや脂肪酸などの病態進展因子が産生されます.これらは,下図に示すように脂肪肝の形成や糖尿病の発症を促します.さらには,コレステロールが血管に蓄積することで粥状動脈硬化症を引き起こすことが知られています
当分野では,このようなメタボの増悪過程において,脂肪酸の産生酵素であるホスホリパーゼA2(PLA2)が図中(1)〜(3)の病変に関与することをPLA2欠損マウスを用いて明らかにしています.今後は,“PLA2が働かなくなると,なぜメタボ関連疾患の発症を抑制できるのか?”という疑問を解決することで,PLA2以外の新しい標的分子の発見や,それを標的とした治療薬の探索を行っていきます.具体的なテーマの一部を以下に挙げます
(1) 高脂肪食投与により脂肪肝となったマウスの肝臓でのPLA2の役割解析
(2) 脂肪肝から肝線維化への進展におけるPLA2の役割についての解析
(3) PLA2欠損マウスでの粥状動脈硬化症の抑制に関与する因子の同定
ダウンシンドローム(DS)は,21番染色体がトリソミー(3本)となっている染色体異常症で,発症率は1/700と非常に高く,その症状は精神遅滞,発達障害,心奇形やアルツハイマー様痴呆と多岐にわたります.しかし,その病態メカニズムは殆ど分かっていません.当分野では,DSの病態のうち,特に記憶学習障害の分子メカニズムを解明するために,DSモデルマウスを用いて,脳内中で変動しているタンパク質を見つけ出し,さらに,それらが治療標的分子として神経分化などに関与することを明らかにしていきます (下図参照).
また,DSモデルマウスに候補薬を投与し,記憶学習能力(行動試験にて解析)が正常になるかどうかなどを検討し,DSの薬物治療への可能性を探ります.
© 2008 Kyoto Pharmaceutical University Lab.of Pathological Biochemistry