分野紹介  INTRODUCTION

 薬物治療学分野では、種々の消化管疾患を対象に、病態の解明と予防および治療法に関する研究を行っています。
 消化管は、一般には消化・吸収を司る臓器として理解されています。しかし、消化管には「第2の脳」とも呼ばれる末梢で最大の神経系である腸管神経系が存在し、また生体内の半分以上の免疫細胞が分布しています。さらに、消化管は多くの消化管ホルモンを分泌しています。すなわち、消化管は、生体の恒常性を調節する神経系、免疫系、内分泌系の中心的役割を果たしていると考えられます。事実、様々な消化管の異常は全身性に影響を及ぼし、一方、全身性の様々な異常は消化管に影響を及ぼすことが知られています。したがって、消化管疾患の病態解析は、時に全身性の様々な疾患の理解にも繋がることが期待できます。
 
 薬物治療学分野では、潰瘍性大腸炎 (Ulcerative Coliti: UC) やクローン病 (Crohn's Disease: CD) などに代表される炎症性腸疾患 (Inflammatory Bowel Disease: IBD)  、それらの合併症として知られる病的線維化や大腸炎関連がん、非ステロイド性抗炎症薬 (Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drug: NSAID) や抗がん剤などによる薬剤起因性消化管傷害などの難治性消化管疾患を対象に、病態理論の確立および予防・治療法の提案を目指して研究を行っています。これらの疾患の病態には、腸上皮バリア機能や腸管免疫系の異常が深く関わっていることから、これらの制御に関与する分子(メディエーターや産生酵素、さらには受容体、チャネルなど)の探索・同定による分子戦略を展開しています。
 

現在着目している病態制御分子

 

 生理活性脂質Gタンパク質共役型受容体(GPCR)

GPR35

BLT1, BLT2

Transient Receptor Potential (TRP)チャネルファミリー

TRPV1, TRPV2, TRPV4, TRPV6

TRPM2. TRPM8

TRPA1

Peptidylarginine deiminase (PAD)

PAD2, PAD4

pH感受性GPCR

GPR4、GPR68

 
 薬物治療学分野の研究手法は、主として動物個体レベルでの検討であり、様々な消化管疾患の病態モデルにおいて、標的分子の遺伝子改変動物や薬理学的ツールを用いて、病理組織学的、免疫組織科学的、生化学的および分子生物学的手法などを駆使して詳細な病態解析を行います。さらに、腸上皮オルガノイドや細胞、分子レベルの解析を併せて行うことで、病態の分子メカニズムを解明します。
 
 これらの病態制御分子の同定および役割を明らかにすることで、消化管疾患の新たな病態および治療理論を提案することを目指し、さらには全身性の疾患への展開も視野に入れています。 

 

 

 

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