12. 化学式作成ソフト(2)
前回は、アプリケーションソフトとしてChemDrawProfessional(Ver.20.1.1)を使用し、 化学的に正確な構造式を描くことを学んだ。今回はさらに、薬学において重要な医薬品 や化学物質の構造式(40個)を描きます。(応用編) |
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<主な到達目標> ○ 構造式を描画するツールとして「ChemDrawProfessional」を使用、いろいろな 作画ツールを理解、利用できる。 ◎ 実際に、構造式を化学的に正しく、バランスよく描くことができる。 ◎ 作成した図を文書(Word)、発表(PowerPoint)などで利用できるようになる。 ○ ChemDrawProfessionalの機能で、構造式と化学名の生成を支援する2つの機能 (「Name→Structure」;「Structure→Name」)を利用できるようになる。 △ 作成した図から「Chem3D Pro」を使って、幾つかの化合物のモデルを表示できるようになる。 |
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ChemDrawProfessionalの画面 | メインツールパレット | ||||
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![]() 2)Chem3DProモデル表示について(便利な機能編) (ここで利用したファイルは提出する必要はありません) |
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1)ここでは、ChemDrawの構造式と化学名の生成を支援する2つの機能(「Name→Structure」、「Structure→Name」)を利用します。ファイル「sample01.cdx」をダブルクリックし、内容を確認します。 | |||||
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○ 残りの3つの化合物についても構造式を描かせてみよう。 | |||||
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○ さて次に、上記とは反対に構造式から化学名を表記させてみよう。 | |||||
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残りの3つのB,C,Dの構造式についても同様に化学名を表記させることができる。 | |||||
2)さて、最後にChem3DProによるモデルの表示について見てみます。(三次元分子モデル) 「Chem3DPro」をまず起動する。続いて、化合物Bの構造式(「タミフル)を選択して、「copy」して、 画面右側の「ChemDraw-LiveLink」のボックス上でクリック、さらに右クリックで「Edit」→「Paste」 にて貼り付けると、左側に画面にタミフルの立体モデルが表示されます。(ここでは細かい点については触れません) |
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★全化合物名(40個の内、まずは1,2,4,10,11,13,14,18,19,24,35,36,37,38の 計14個を描画を描いてみましょう!)⇒続いて、残りの26個を描きましょう! 提出課題は40個すべてです。 1.アスピリン 2.アセタゾラミド 3.アセチルコリン 4.アドレナリン 5.アロプリノール 6.イブプロフェン 7.スキサメトニウム 8.インドメタシン 9.エピナスチン(アレジオン) 10.エフェドリン 11.オメプラゾール 12.クロモグリク酸ナトリウム 13.コカイン 14.コデイン 15.ジクロフェナクナトリウム(ボルタレン) 16.ジフェンヒドラミン 17.スピロノラクトン 18.ツボクラリン 19.ドパミン 20.トラニラスト 21.トラネキサム酸 22.トリアムテレン 23.ニコチン 24.ノルアドレナリン 25.ハロタン 26.ヒドロクロロチアジド 27.ファモチジン(ガスター) 28.プラバスタチン 29.プレドニゾロン 30.プロカイン 31.リドカイン 32.ファビピラビル(アビガン) 33.ロキソプロフェンナトリウム(ロキソニン) 34.プロプラノロール 35.メマンチン(メマリー) 36.ヘロイン 37.モルヒネ 38.モルヌピラビル(ラゲブリオ) 39.ワルファリン 40.エンシトレルビル・フマル酸(ゾコーバ) |
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![]() について(自宅PCでこのソフトウエアをインストールして使用する場合) →manabaの「情報科学(No.4)(対面授業)」の“化学式作成ソフト(ChemDraw Professional)のサイトライセンス契約について”をクリックし、PDFファイルを参照して インストールし、使用してください。 |
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1.アスピリン C9H8O4 (解熱鎮痛消炎・ 抗血小板剤) 2.アセタゾラミド C4H6N4O3S2 (炭酸脱水素酵素 抑制剤) 3.アセチルコリン C7H16NO2 (神経伝達物質) 4.アドレナリン C9H13NO3 (副腎髄質ホルモン) 5.アロプリノール C5H4N4O (高尿酸血症治療剤) 6.イブプロフェン C13H18O2 (抗炎症・解熱・鎮痛薬) 7.スキサメトニウム C14H30N2O4 (脱分極性筋弛緩剤) |
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8.インドメタシン C19H16ClNO4 (非ステロイド性消炎 ・鎮痛・解熱剤) 9.エピナスチン (アレジオン®) C16H15N3 (アレルギー疾患治療剤) 10.エフェドリン C10H15NO (気管支拡張・鎮咳剤) 11.オメプラゾール C17H19N3O3S (プロトンポンプ・阻害剤) 12.クロモグリク酸ナトリウム C23H14Na2O11 (喘息・アレルギー性疾患 治療剤) |
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13.コカイン C17H21NO4 (局所麻酔薬) 14.コデイン C18H21NO3 (麻薬性鎮咳薬) 15.ジクロフェナクナトリウム (ボルタレン®) C14H10Cl2NNaO2 (消炎鎮痛剤) 16.ジフェンヒドラミン C17H21NO (アレルギー性疾患 治療剤) 17.スピロノラクトン C24H32O4S (抗アルドステロン性 利尿・降圧剤) |
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18.ツボクラリン C37H41N2O6 19.ドパミン C8H11NO2 (急性循環不全改善剤) 20.トラニラスト C18H17NO5 (アレルギー性・ ケロイド・肥厚性 瘢痕治療薬) 21.トラネキサム酸 C8H15NO2 (抗プラスミン薬) 22.トリアムテレン C12H11N7 (カリウム非排泄性 降圧利尿剤) 23.ニコチン C10H14N2 |
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24.ノルアドレナリン C8H11NO3 (血圧上昇剤) 25.ハロタン C2HBrClF3 (吸入麻酔薬) 26.ヒドロクロロチアジド C7H8ClN3O4S2 (チアジド系利尿薬) 27.ファモチジン (ガスター®) C8H15N7O2S3 (H2受容体拮抗剤) 28.プラバスタチン C23H35NaO7 (HMG-CoA還元 酵素阻害剤) |
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29.プレドニゾロン C21H28O5 (合成副腎皮質 ホルモン剤) 30.プロカイン C13H20N2O2 (局所麻酔薬) 31.リドカイン C14H22N2O (局所麻酔・抗不整脈剤) 32.ファビピラビル (アビガン®) C5H4FN3O2 (新型インフルエンザウイルス 治療薬;ウイルスRNA依存性 RNAポリメラーゼ阻害剤) 33.ロキソプロフェン ナトリウム(ロキソニン®) C15H17NaO3 (消炎鎮痛剤) |
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34.プロプラノロール C16H21NO2 (β遮断性高血圧・ 狭心症・不整脈 治療剤) 35.メマンチン(メマリー®) C12H21N (NMDA受容体拮抗薬・ アルツハイマー型 認知症治療剤) 36.ヘロイン C21H23NO5 37.モルヒネ C17H19NO3 (鎮痛剤) |
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38.モルヌピラビル(ラゲブリオ®) C13H19N3O7 (RNAポリメラーゼ阻害薬: SARS-CoV-2による 感染症治療薬) 39.ワルファリン C19H16O4 (抗凝血剤) 40.エンシトレルビル・フマル酸 (ゾコーバ®) C22H17ClF3N9O2・C4H4O4 (3CLプロテアーゼ阻害薬: SARS-CoV-2による 感染症治療薬) |
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以下、構造式の描き方の具体例を挙げている。 | |||||
◎ 官能基: c → CH3、 o → OH、 h → H、 n → NH2、 s → SH、 | |||||
f → F、 b → Br、 e → Et、 C(大文字)→ Cl | |||||
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ここではツボクラリン(18)を例として説明する。 | |||||
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作成した構造式を「選択ツール」にて選択して、メニューの「View」→「Show Analysis Window」 を選択。分子式があっていることを確認する。 (この例では、「C37H41N2O6」が予想の分子式で、一致している) |
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■ 構造式をバランスよく書くには・・・ 1)環構造を先に描く。(ベンゼン環、5員環、6員環など) 2)つづいて、側鎖の線を書く(しっかり連結させるように注意)。 3)官能基(水酸基、アミノ基、メチル基など)や原子を描く。 4)全体の大きさを考えて、構造式を選択し、縮小(または拡大)する。 |
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◎ 構造式の描き方の例(5個) | |||||
■例1.アセタゾラミド(2)を描くことを例とします。 まず、「ツールパレット」の「テンプレート」→「Aromatics」から、以下の5員環を選択、クリックする。 |
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続いて、以下の図のように描くとアセタゾラミド(2)が完成する。 | |||||
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■例2. コカイン(13)を描くことを例とします。 まず、「ツールパレット」の「いす型シクロヘキサン環」を選び、クリックして描きます。 次に、環構造、線を描きます。下図のように、線の一部の前後をうまく描けたら、 つづいて、官能基を描いて、コカイン(13)の作図が完成します。 |
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■例3.構造のよく似ている化合物の作図について (化合物番号「4,10,19,24」と「14,36,37」) |
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化合物番号「4,10,19,24」は並べてみると、構造がほとんど類似しているので、 化合物(4)をコピーして、その後、いらない部分を削除。化合物(10),(19),(24)を描くことが出来る。 |
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(さらに詳しく) ここでは1ページ目の化合物4をコピー(copy)して、5ページ目に化合物24を描くことを考える。 |
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1) 1ページ目の化合物4の構造式の全体を「選択ツール」にて選択、その上で「右クリック」して、現れるメニューから「Copy」をクリック。 | ||||
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2) 5ページ目の先頭まで画面を移動して(化合物23の次)、その場で「右クリック」して、現れるメニューから「Paste」をクリックする。 | ||||
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3) コピーされた化合物4が現れるので、そのままその化合物をドラッグして、適当な場所に移動させ、別のところをクリックして選択を解除する。 ○ コピーされた化合物4を再編集して、化合物24へと変換させる。 |
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化合物番号「14,36,37」)も同様に、構造が類似しているので、 化合物(14)をコピーして、編集。化合物(36),(37)を描くことが出来る。 |
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■例4. 「オメプラゾール(11)」の描き方について、説明します。 <方法1> 1.左側のユニットをまず描きます。 2.「テンプレート」→「Aromatics」から右側の二環性のユニットを描く。 3.矩形選択ツールで、2つの点を選択、「Object」から「Join」。 4.最後に官能基を正確に描いて、完成。 |
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<方法2> 1.「テンプレート」→「Aromatics」から右側の二環性のユニットを描く。 2.右から左方向へ環構造部分などを描き、続いて側鎖も描く。 3.最後に官能基を正確に描いて、完成。 |
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■例5.モルヌピラビル(ラゲブリオ®)(38)の描き方を説明します。 まず、「ツールパレット」の「テンプレート」→「Conformers」から、以下の5員環を選択、クリックする。 |
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以下のように、5員環ユニットが描かれるので、5員環ユニットの各頂点を 選択ツールで変形し、必要とする5員環を作成する。後は、環構造および 線などを描いて、必要な官能基を描く。 |
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★★ シュウ酸塩(またはリン酸塩)の描き方について(40)(参考までに・・・) | |||||
○ まず、「View」→「Show Character Map Window」を選択、さらに「テキストツール」を選択。 フォントの種類は「Symbol」になっていることを確認。左端に表示されている「・」をクリックすると、 「・」が表示される。シュウ酸を別途描いて、「・」に近接させる。シュウ酸塩の完成。 その他、リン酸塩ならばテキストボックスの「・」に続いて、H3PO4)と入力する。数字の部分を 下付きにする場合は「H3PO4」を選択して、文字のスタイルを「Formula」にすると、「H3PO4」へ変更できる。 |
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