スタッフはこれまで循環器系疾患を中心とした内科診療
や教育・研究に従事してきまし た。生活習慣病の代表的なものに虚血性心臓病(狭心症、心筋梗塞)や高血圧、糖
尿病、脂 質異常症などがあります。今後、「血管病」としての冠動脈疾患や心不全が
ますます増加する 事が予想される一方、いわゆる「メタ ボリックシンドローム」や「慢性腎疾患(CKD)」が冠
動脈疾患の危険因子としても重視されています(心腎連関)。また、死因の順位を「老衰」に抜かれた、脳血管疾 患、
いわゆる脳梗塞や脳出血、くも膜下出血を総称した「脳卒中」は、死亡には至らなくても、その後の患 者・家族の生活のQOLを著しく 低下させ、「健康寿命」を短縮するとともに、その発症率は
我が国では依然、心筋梗塞を上回っています。その脳卒 中の最大のリスクが
4200万人を超 える患者数を誇る「高血圧症」 だと考えられています。研究室で は「血管病」
の予防に関する薬物効果を中心に様々な疾患モデル動物、培養細胞を用い、心不全、虚 血心筋障害の機序と心
筋保護・再 生の研究、及び高血圧の成因における中 枢(脳)の関与と腎臓病を
中心とする臓器障害の 予防の研究を進めています。
心筋保護の研究では、ラットの培養心筋細胞やマウス・ラットの心筋梗塞・心不全モデル(自分たちで作
製)を用いて、種々の薬剤による心機能改善効果の機序の検討を行っています。循環器領域では、近い将来に「心不全パンデミック」
の到来が危惧されています。既に治療法が確 立されたと思われていた心不全ですが、最近、収縮能が保たれた心不全(HEFpEF)が
治療抵抗性で、生命予後 が悪いことが知られるようになり注目を浴びています。欧米では、以前から死
亡原因の第1位は 「心臓病」であり、「脳卒中」や「がん」が多い我が国とは、疾病構造が少々異なることが指摘されてい
ます。しか し、近年のLife Styleの欧米化に伴い、やがて我が国の疾病構造も変化する可能性は十分
考えられます。
高血圧に関する研究では、何種類かのラットの高血圧モデルを作製し、薬物、自然食品の薬効を検討しています。どうしてラットを高血
圧の研究に用いるのか?と
疑問を持たれる方もいらっしゃるかもしれませんが、ラットの血圧はヒトとほぼ同じで、短期間の間に「高血圧性臓器障害」を認められる
ため、薬効の検討に適しています。(勿論、動物実験は最小限にする配慮を行っていることは言うまでもありません。) 実験内容の一部
に、高血圧の成因論(何 が原因で高血圧が生じてくるのか)に占める中枢神経系の関与を、「脳
内レニン・アンジオテンシン・アルドステ ロン系」や「交感神経中枢の異常」の検討、また脳微小灌流
(micro-dialysis) 法を
用い神経伝達物質としてのカテコラミンや一 酸化窒素 (NO) 、GABA、TGF-βの働 きを検討しています。
さらにインスリン抵抗性と高血圧の関係、及び培養血管内皮細胞及び平滑筋細胞、大
動脈リング標本を用い、血管内皮細胞障害から始まる血管傷害や腎障害に対する降圧・糖尿病治療効果、
シグナル伝達についても mRNAや
蛋白発現レベル、組織標本から検討を行っています。
最近では、「脳・心・腎連関」と生活習慣病について、TGFβや酸
化 ストレスの面からの心臓・腎臓・血管などの臓 器保護に対する既存薬物の新規効果の検討、すなわち「ドラッ
グ・リポジショニング」についても検討を行っています。ま た、最近話題を集 めている健康食品・機能性食品の降
圧、腎保護効果やストレスに対する反応の変化(ス トレス反応
を、覚醒下の心拍数や血圧の揺らぎ解析を行うことで交感神経、副交感神経活性、すなわちストレ
ス反応の定量化を行うことが可能)につい ても研究を進めています。
近年、長寿社会において、健康寿命を長く保つことも注目されています。高齢者の「寝たきり・要
介護」の原因の四分の一は、骨折や筋力
低下に基づく運動機能の低下が原因となると言われています。加齢とともに低栄養や運動不足、基礎疾患により筋肉量や筋力が低下する事
が知られており、これに伴う運動能の低下を「サルコペニア ・ ロコモティブシンドローム」と呼んでい
ます。さらに最近では、修復可能な 段階の高齢者の肉体的、社会的衰えを「フレイル」
と呼び、「寝たきり・要介護」の予 防の目安として注目されています。中壮年時代の
「メタボリック症候群」予防のための食事制限が、サルコペニアやフレイルの要因となりうることも問題とされ、その食事を含めた生活習
慣指導の切り替え時期についても検討課題となっています。この検討を行うためのモデルとして、研究室では、自然発症高血圧モデ
ルラットに高脂肪食を投与することで、従来よりも早 期に「サルコペニアモデル」を
創る検討も併せて始めています。
また、歯周病と心血管疾患の関連が報告されています
が、研究室ではラットの歯周病モデルを作製し、虚血性心疾患や心不全との関連、 薬剤による予防効果の検討にも着手しています。
上記研究に加え、ラボミーティングや英語学術論文を開設する抄読会を通じて、EBMの理解を
含めた「Clinical Mind」を持った薬剤師の輩出に貢献できればと願って日々の
生活を送っております。
「陽気に元気に生き生きと」と いう開設当時の信念をモットーに大所
帯でワイワイ・ガヤガヤとやっています。
担当講義
1年生: 基礎演習、早期体験学習
2年生: 解剖学・生理学実習
3年次生: 病態診断学A、薬理学実習 、薬学特別研究
4年次生: 病態診断学B、薬学特別研究
6年次生: 分子病態学概論A、 アドバンスド薬学、薬学特別研究
大学院: 分子病態学特論Ⅰ、Ⅱ